童話作品集

10代後半から20代にかけて、わたしが書きためた童話たちです。
予定のない、気まぐれな旅にでかけるように、日常のもう少しだけ向こうの方を、見てみたいのです。

ひととき、ある日の風景や懐かしい匂い、風の温度…
そういう不確かなものを伝えられるお話をつくりたいと思っています。

1995年1月 毎日新聞社主催 第13回「小さな童話」大賞 山下明生賞受賞
いつかピアノを真ん中に置いたお話を書こうと思いつつ、その実現までに9年かかってしまいました。
私のなかで特別な意味を持つ作品です。
1994年2月 毎日新聞社主催 第11回「小さな童話」大賞 工藤直子賞受賞
スナップ写真を撮る感覚で心が動く一瞬を切り取ってみました。
近くにいるからこその関係の在り方へのとまどい、そして兄妹のような二人がテーマです。
1997年2月 毎日新聞社主催 第14回「小さな童話」大賞第 一次審査通過
「3人」をテーマに書いた作品です。
目の粗いスケッチブックに並んでゆく文字とてのひらに、
人を好きになる気持ち、淡くても確かな繋がりを表わせたらと思いました。
1989年3月 毎日新聞社はないちもんめ編集部主催 第7回小さな童話大賞 佳作
いつも通る道のかたすみに、ふと迷いこんでしまう場所があるような気がするのです。
それは、眠っていた記憶の断片であったり、遠い憧れであったり。
浮かぶイメージに、素直に。そして、自由な気持ちで文章にしてみました。
ぶどう色の口紅
1997年1月
私にも遠い親類に、この作品に出てくるおばに値する女性がいます。
子供の頃、その人と枕を並べて眠ったたった一日の思い出が、この物語のイメージとなりました。
私は今でも同じ場所に立っているのかもしれません。
ストーヴが待ってる
1992年2月
喫茶店は私の好きな場所のひとつです。
この童話を書いたのはずいぶん前ですが、今でも何故か自分の記憶のなかに残っている風景です。
きのうの空から
1990年4月 毎日新聞社主催 第8回「小さな童話」大賞 第一次審査通過
人の死というものが、しっくりと描くことが出来ずにいます。
乗り越えることが出来ないもの、乗り越えるものではないことのように思えるのです。
季節のカレンダー
1990年2月 毎日新聞社主催 第8回「小さな童話」大賞 第一次審査通
生きていく道すじの途中で、ときおり想いが残ってしまうことがあるのではないでしょうか。
うずくまったままのその場所で、またいつか出会える日が来るかもしれません。
1988年2月 毎日新聞社主催 第6回「小さな童話」大賞 第一次審査通過
思えば、夕暮れに遊ぶのが好きな子供でした。
昼間には見えないもうひとつの世界と繋がっているような自由さと、明るさを失った孤独感に、
なぜか胸が高鳴ったのを覚えています。
1988年2月 毎日新聞社主催 第6回「小さな童話」大賞 山下明生賞受賞
「平凡に生きている人にこそある宝物を描きたかった」
当時、受賞の挨拶に私はこのようなことを書きました。
今改めて読むと、童話らしさを意識しすぎていたのか甘ったるく、とても恥ずかしいのですが、
初めて自分の作品が多くの人の目に触れる機会を得た、記念すべきお話でもあるので、
この場所に仲間入りさせることにしました。
(むぎわらゆらというペンネームで初めて書いた作品でもあります)