部屋にある本棚

完璧な病室/

2013年01月27日

完璧な病室清らかで無機質な病室のなかで、
ぶどうしか身体が受けつけなくなった弟と過ごす私。
そこには、心を乱す生活の汚れも、
食欲も、肉体的な要素もなにもない。

小川洋子さんらしいというか、ある特定の人物やものごとに対しての執着、
偏った愛情、排除を強く感じる作品。

弟に愛情をひたむきに注ぐ姉。
閉ざされた空間のゆるやかな時間の流れや、静かで優しげな弟との触れ合いとは対照的に、
過去の記憶の断片は色彩や匂いが色濃く、夫との生活は冷静で生々しい。

特に夫に対して優しさを感じながらも、食べる姿を見つめている「私」の、
どこか悪意に近い冷やかなまなざしは「なにもここまで書かなくても」と息苦しくさえあった。

また、どこまでも無機質なものに安らぎを感じながら、
弟の主治医に対しての官能的な肉体の描写に、不思議な矛盾を感じる。

確かに小川さんの独特な描写を読んでいると、生きることの本質は動物的だなと改めて思う。
その当たり前のことを肯定的に見るか、否定的に捉えるかで見えるものは
こんなにも変わってしまうものなのか。
正常と異常、正気と狂気、自分は本当はどちらに身を置いているのか。

この小説では、病院、こと病室が人間臭さから遠い場所として象徴されているように感じたけれど、
私はそこに本能的なものを感じるし、生への執着も雑多なことも溢れていると思っている。
ただそれが角張った場所にぎゅっと凝縮されているだけで。