部屋にある本棚

寡黙な死骸 みだらな弔い/

2013年01月27日

寡黙な死骸 みだらな弔いすばらしく晴れた日曜日。ふと入った洋菓子屋に店員の姿はない。
永遠に6つのままの息子のためにバースデイケーキを買いに来た母親と、
一人の老女が出会うひとときから始まる。

小川洋子さんの小説には、食べ物とそれらを口にする描写が多く出てくるように思う。
それは健康的に胃袋を満たす馴染んだ存在ではなく、
やるせなく、時に残酷で、官能的だ。

苺のショートケーキも、老婆が栽培した掌の形をした人参も、
道路一面に散らばったトマトも、唇からあふれるキウイの甘い果汁も。
小川さんの手にかかると、濃厚な香りと鮮やかな色彩を帯びてしまうのだ。
毒を隠し持った植物が放つ鮮やかさに似て。

それらの食べ物たちもやがては朽ちてゆく。
人の生命が死を含んでいるのと同じように。

11の物語からなる、この『寡黙な死骸 みだらな弔い』は、
死が編み込まれている短編集だ。
連作という形をとられているが、面白いのは、
それぞれの章の登場人物たちがどこかで出会っていること。

大仰な出会いではなく、ひっそりと。
記憶の片隅で11の物語がすれ違う。
目をこらしていないと、あっさりこの迷宮に迷い込んでしまうかもしれません。