グリム、アンデルセンの罪深い姫の物語/松本侑子
2013年01月27日
子供のころ親しんだお伽話。
その現本に本来描かれていた真実を掘り下げていくような本が流行りだしたのは
いつからなのだろう。
グリム、アンデルセン童話には、人間が持つ本能的な嫉妬、憎しみ、
差別などの行為が、愛情と背反した鏡のように寄り添っている。
子供の時に読んだ本は、そんな部分はだいぶカットされていたということを、
現本などを読むことによって知ることになる。
ただ、カットされていてもなお、子供のころに読んだその物語たちは、
私の記憶で「綺麗なお伽話」としては残っていない。
むしろ、世の中の不条理、残酷さの印象が色濃い。
たとえば、私にとって白雪姫は継母に殺害されるかわいそうな存在ではなかった。
小人の言いつけも守らず、ただ自分の欲のままに動き、
あげく継母の企みに何度もひっかかってしまう愚かな白雪姫。
息をふきかえし、王子様との婚礼式に訪れた母を
焼けた靴を履かせて殺してしまうその残虐さ。
描かれているのは、教訓的な「目には目を」の世界。
大人たちが今好んでこのような本を再度手に取るのはいったいなぜなんだろう?
お伽話のなかの現実に親しみを感じるからだろうか。それとも?
この本は、そういった童話の現本を元に、作者自らの文体でパロディ化されたもの。
改めて読むとパロディとなって、むしろ本当が見えてくるような気がしました。
物語のなかの姫たちのエロティックさ、したたかさを感じずにはいられません。