部屋にある本棚

本当の戦争の話をしよう/

2013年01月27日

本当の戦争の話をしよう<本当の戦争の話というのは全然教訓的ではない。
それは人間の徳性を良い方向に導かないし、高めもしない。
かくあるべしという行動規範を示唆したりもしない。
また人がそれまでやってきた行いをやめさせたりするようなこともない。
もし教訓的に思える戦争の話があったら、それは信じないほうがいい。>

と本文中にあるけれど、この本は、戦争それ自体を語ってはいない。
言うならば、戦争という大きなものに組み込まれている人の心もよう、だろうか。
知的で愛情深く、同時に野蛮で残虐性を持つ人間の真のありよう。
だから、ヴェトナム戦時下が描かれてはいるが、他の戦争にもあてはめることができるのではないだろうか。

著者ティム・オブライエンは、かつてヴェトナム戦争に歩兵として従軍した。
その事実が根幹にあるフィクションである。
主人公は著者自身の名ティムとして生き、語っている。
淡々と、しかし圧倒的な真実味がある。
それは本当にあったことを書けば得られるものではないのだろう。

特に『レイニー河で』では、徴兵の知らせを受けたティム青年の深い悲しみと静かな憎しみに引き込まれた。
私にはすべてを理解することなど到底できないだろう。
それでも、戦争そのものが以前のような距離感を失ってしまった今、読んで良かったと思う。
たぶん、一年前に読むよりはずっと。