部屋にある本棚

ピアニシモ/

2013年01月27日

ピアニシモロックバンド『エコーズ』のヴォーカリスト、辻 仁成さんが、音楽から小説の世界に転身したデビュー作。
同時にこれは、すばる文学賞受賞作。
正直言えば、どんな文章を書くのだろうという興味本位でこの本を手にした。
今や何冊もの著書を世に送り出している辻さんだが、歌を作ることと小説を書くこと、
これは相通ずるものがあるのだなと感じる。
そこにあるメッセージ性の強さ。伝えたいことを持っている人だ。

大人への成長の過程で立ち止まっている僕。
そして、僕が内に作り出したもう一人の味方「ヒカル」の存在、
伝言ダイヤルで知りあった一人の少女サキ。
水面下に潜む静かなる家庭の崩壊と、波長のずれたものはいけにえになる、
学校という「新型の全体主義」のなかで生きる僕の孤独と葛藤は、
まさにリアルタイムの現代を象徴するものではないだろうか。

暗く救いがないようにも思える世界を淡々とした視線で描きながらも、
そこに僕が生きようとする行き場のないエネルギーの力強さを感じられる。
特に、もう一人の自分、ヒカルとの決別のシーンは、言葉にならないメッセージが含まれているようで印象的でした。