部屋にある本棚

いつか記憶からこぼれおちるとしても/

2013年01月5日

『緑の猫』を読んでいたら、ふいに、中学校の音楽室を思い出した。
お昼休みになると、私はピアノを拝借して弾いていた。
校舎にはたくさんの人がいるのに、音楽室はいつもひっそりとしていて、遠い思い出みたいな距離感で、誰かの笑い声やさまざまな音が交じり合ってむこう側にいる。
(さらに…)

ホテルカクタス/

2007年03月23日

ホテルカクタスずっと孤独でいると、孤独であるということにわざわざ気づかないものだ、とよく思う。
たとえば、誰かと出会って、その誰かと心が通い合えたとき、
幸福な気持ちの片隅で、人は本当は一人なのだと改めて気づく。
はじめからそこにあったのに、光が差し込んでやっと見つかった落し物みたいに。

だから、孤独を知ることができるというのは、
時に、そんなに悪いことではないのでは、と私は思うのだ。

この本。そのつねづね思う孤独感や物事の本質が、
選び抜かれた言葉と日本語の持つおかしみで、なんとも素敵に表現されている。
こんなふうに自由で静かでシニカルな世界が描ける、江國さんに感嘆。

物語は、ホテルカクタスという名のアパートに住む、
<帽子>と<きゅうり>と<数字の2>、の三人が主人公だ。
三つでも三本でもなく、読み進めればきちんと「三人」であることに納得できる。
彼らの中に自分の知ってる誰かさんの姿を見てしまうかもしれないし、
夜には、自分も好きな飲み物(私は白ワイン!)を持ち寄って、
きゅうりの部屋で語り合ったりしたい気分になってしまうことだろう。

なにしろ彼らは、ちゃんと孤独であることを知っている
愛すべき大人たちなのだから。
添えられた佐々木敦子さんの絵も絶品。

もし私がこの本に絵を描くとしたら、とひっそり想像して、
絵のなかに、帽子やきゅうりや数字の2を登場させるという失敗をやらかしただろうな。