部屋にある本棚

夏への扉/

2013年01月30日

夏への扉この本は、とにかく好き。
ストーリーはSFでは珍しくない冷凍睡眠とタイムトラベルが柱になっていて、
しかも期待通りに流れる。
何故好きなのか。まず文体の爽やかさにあるのだろうと思うけれど、
冒頭の一節「かくいう僕も夏への扉を探していた」に惚れてしまったのだ。
 
雪深いコネチカットの冬の間、(猫用のドアを含めて)外へと通じる扉が全部で12個もあるアパートで、
雪景色ではなく夏に通じている扉を求めている猫のピートのために、ひとつひとつその扉を開けて、
まだ雪が積もっていることを確認させる僕。
ピートと僕の距離感のある同居風景がありありと見えて、
読んでいる私まで閉ざされた冬ではなく、
緑の風が吹き抜ける夏空を求めている気になる。
私にとって、ブルーな時に読むと、心が癒されてしまうような素敵な一冊。

蝶々の纏足/

2013年01月29日

纏足というのをドキュメンタリー番組で見たことがある。
ちいさな足が美人という価値観の元、自分のサイズよりもまったくちいさな靴を履き続けること。
窮屈とか生易しいものではなく、骨を砕き、おもちゃのようにちいさな靴に詰められた足は、
醜くゆがんで靴の大きさに固まっていく。

この本を読むと悲鳴を上げているようにゆがんだ足を思い出す。
美しい友人とそうでない自分。
人を惹き付ける魅力を知り付くした彼女を憎んでも捕らえられたように離れることが出来ない主人公。
美しいものに対する純粋な羨望、反面の憎しみ、誰かの影ではなく、
自分が自由に自分でいられることへ切実な思い。
でも、光あっての影であり、影があっての光、でもあるんだよなぁ。

風葬の教室/

2013年01月29日

集団に属することに固執すると、学校という場所は偏狭で生きづらい。
生け贄にならないためには、目立たないように自分の輪郭をそっと消し去る。
転校生であり、しかも美しい少女杏は、その「やり方」を熟知していたけれど、
そこではうまくはいかなかった・・・

山田詠美さんが描く少女たちの姿、嫉妬や、媚び、残酷さは、
大人の世界を凝縮したような苦さがある。
男の子はどこまでも子供で、女の子はすでにオンナだった小学生時代。
無邪気さと残酷さで加速するいじめの行為。

密かに達観した心で、そんな同級生たちを見つめる杏。
詠美さんならではと言えるようなエロティックな感覚や、クールさ、
大人のオンナのしたたかさを身に付けているような杏の低温の目と、
それに背反するように揺れ動く少女らしさが興味深い。

いじめは概して、周りの大人たちからは戦うことを要求されがちな気がする。
戦わないことやうまくやっていけないことは、それだけで人生の敗北であるかのように。
この本のタイトルにもある別の選択と、辛いテーマでありながらも、
どんなときも無条件であたたかく、かつ一風変わった家族のありかたが胸に残った。